2009年4月15日水曜日

名誉毀損の要件(1)-事実か意見か-

 名誉毀損は,簡単にいえば「事実」を摘示することで人の社会的評価を低下させることである。事実を摘示しないでする場合は,侮辱行為とされている。
 何が「事実」で,事実を摘示したか否かの基準は明確なようで,実は難しいが,
     証拠によってその存否を確定できるもの
かが基準とされる。
 
 具体的にみよう。
 「○○は,Aを殺した犯人である。」
 これは,○○が,Aを殺したと断定した「事実」の摘示である。Aを殺した者が,○○であるか否かは,証拠によって確定できるのである。
 「○○は,馬鹿である。」
 これは,一般には,「事実」の摘示とはいえないとされる。「馬鹿」というのは,一義的な内容をもたず,勉強ができるからといって「馬鹿」とはいえない場合であろうし,逆もしかりであるからであろう。
 後者の場合は,「意見」による誹謗中傷ということになろう。
 
 「事実」と「意見」の峻別は,学問の基本である。この区別は,最高裁も認めており,「事実」の摘示を基にした誹謗中傷,すなわち,名誉毀損の場合は,その事実が真実か否か等(後に述べる,真実性・真実相当性の法理)が問題となり,「事実」を含まない単なる「意見」の場合には,大幅に表現の自由を認める。多様な意見を保障することが望ましいということになる。

 したがって,名誉毀損として判断されることでは,「事実」を前提としているか,前提としない「意見」かの区別が重要となる。
 
 更に,最高裁は,婉曲的表現であって「意見」とみえても,ある一定の事実を黙示的にでも摘示されている場合は,「事実の摘示」があったとして名誉毀損と考えている。例えば,先ほどの後者の例も,ある一定の事実を前提として「意見」を述べている場合には,その事実について真実性等が問題になる場合がある。

 事実か意見か,極めて重要な問題である。
 
……………………………………………………
公式サイト携帯サイト